冨山清升の学術振興会特別研究員研究の概要


1991〜1992年(学術振興会特別研究員) 

研究テーマ「陸産貝類からみた小笠原諸島の地域別自然度」

【要旨】 

小笠原諸島は日本では数少ない海洋島のひとつである。動植物には固有種が多く、特に陸産貝類(以下陸貝と略す)はその約90%が固有種であることが知られている。しかし、森林伐採と人が持ち込んだ帰化動植物による自然破壊のため、数多くの動植物が絶滅、もしくは絶滅の瀬戸際に追い込まれている。陸貝は、明治期に記載された固有種(約110種)のうち、約70%が絶滅したものと推定される。固有陸貝は固有生態系が保全されているのみ生き残っている傾向が強く、自然の保全を考える上で陸貝は非常に有益な情報をもたらす。

[研究の目的]

小笠原は面積が非常に狭い。しかも、ほぼ全域が国立公園地域に編入されているので利用可能な土地がきわめて限られている。そのため開発と自然保護の対立する場面がしばしば起こってきた。今後も両者の関係がいっそう厳しくなることが予想される。国立公園の地域区分自体が短期間の不十分な調査に基づいてなされたこと、固有動植物の分布が反映されていないこと、指定から20年近くたち自然に対する評価が高まってきたこと、などから実際の自然の貴重性と合わない面が見られる。そこで本研究では過去に行われた人間活動の度合と生物の分布の両面から、小笠原の地域別自然度を求め、開発と自然保護の調和をはかる上で役立つ資料作りをめざした。本研究は共同研究である。

[結果]

ここ数年蓄積してきたを用いて地域別自然度を評価した。項目は、@過去の人間活動ー土地利用、森林伐採、植林、山火事、軍施設、A現在の生物分布ー植生、稀産植物、シダ、固有陸貝、帰化植物、帰化動物(強調文字私が担当)。父島母島以外の属島については資料がほとんどないので今回新らたに現地調査を行なった。全島をできるだけ細かいで区分し、処理した。上記項目をそれぞれ数段階に階級分けしての小区画ごとに独立に評価した。各項目に重みづけを行って総合化することにより各地域の総合自然度を求め図化した。 

数値化手法法による自然度評価の試みはこれまでも多くの例がある。しかし、植生分布や土地利用のみに基づくものが大半であるため最終的な自然度評価の階級数も少なく評価も一面的なものになっている。また、評価地域の面積が大きいので、大まかな傾向しか読み取ることができない。本研究により多くの項目を独立に評価して自然度を求めるため、総合化にあたって各項目の重み付けを変えることにより多面的な評価ができた。また、これまでの研究の密度と精度からして、従来のものより細かなとすることができるため、きめ細かな読み取りが可能になった。

最終的に地域別の総合自然度を10段階に評価でき、しかも各項目の重み付けを変えることで多面的な評価を行った。このため今後の開発計画を立てる上で重要な判断材料となるであろう。また個々の項目の評価の組合せによって国立公園の地域・地区区分の見通しや帰化動植物に対する対応など自然保護の面でも役に立つ。結果として、小笠原の貴重な財産である自然を守り生かしながら、慎重に開発を進める道が開けたと思われる。


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