環境鉱物学研究室の研究内容


研究内容

 本研究室では、地球生命圏領域の環境化学および物質循環の解明を主な研究テーマとしています。現在の地球表層環境は、固体地球を構成する種々の鉱物と地球生命圏を形成する多くの生物の間の微妙な物質循環のバランスにより維持されています。また、地球表層に存在する水はこれらの物質循環の媒体として機能しています。そこで、本研究室では、地球表層環境を「鉱物圏」-「生命圏」-「水圏」の反応系としてとらえ、これら各圏の相互作用で生じる様々な素反応を解析することにより、地球環境の実態と維持機構を明らかにしていきます。研究手法は、天然の鉱物、微生物、水の採取と分析、鉱物と水の反応実験、溶液からの鉱物の合成実験、鉱物と有機化合物の反応実験、微生物によるイオン濃集実験、鉱物と微生物の反応実験、コンピュターによるシミュレーションなどです。研究に使用する機器は、X線回折装置、透過及び走査電子顕微鏡、エネルギー分散X線分析装置、X線光電子分光分析装置、原子間力顕微鏡、赤外線吸収分析装置、可視紫外分光分析装置、原子吸光、液体クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィーなどがあります。本研究室では、出身学部学科を問わず、フィロンティア精神に溢れ、行動力のある学生を広く募集します。一緒に研究を楽しみましょう。

主な研究テーマ

1.地球表層物質圏の形成
地球表層物質圏は地球システムのなかで最も物理的・化学的多様性に富み、地球環境の維持や生命圏の存続および人類社会の発展とも密接に関連した存在です。このような地球表層物質圏の形成と変化について鉱物圏を中心とした微生物、水、大気の相互作用の観点から研究を進めています。

2.地球と生命との関係性
地球表層環境の形成や変遷には約38億年前に誕生した生命の影響が大きく関わっていることが知られています。現在の地球表層物質圏の形成や元素循環、さらにグローバルな地球環境の維持機構に対しても微生物を主とした生命による大きなインパクトが予想されています。このような地球と生命の相互関係性を明らかにすることを目的として鉱物と微生物との反応を分子・原子レベルで解析し、反応機構の構築と反応速度の定量化を行っています。

3.放射性廃棄物地層処分の安全性評価
高レベル放射性廃棄物地層処分事業の安全性を確保するため、処分システムの緩衝材として利用されるスメクタイトの地下微生物に対する長期安定性の評価を行っています。これまで、微生物量に対するスメクタイトの溶解速度の定量化および反応に関与する有機分子の特定を行ってきました。現在、有機配位子促進溶解理論に基づいて、溶液中に存在する有機分子の反応サイト数をパラメータとするスメクタイトの溶解速度の評価方法の開発を行っています。

4.二酸化炭素の循環
地球温暖化の主要原因物質である二酸化炭素の地球システム相互作用による循環を明らかにするため、大気二酸化炭素と鉱物および微生物との反応機構の解析を行っています。現在は、主にカルサイトと微生物との相互作用および微生物系でのカルサイトの溶解速度の定量化についての検討を行っています。

5.環境浄化材料の開発
天然物質を用いた環境浄化材料の開発を行っています。現在は、主に水環境中に拡散した重金属イオンやホウ素の選択的回収を目的として種々の粘土鉱物や有機物質の環境浄化材料としての特性評価と機能性の向上のための研究を行っています。

火山ガラス表面に生成された溶脱層 合成アロフェンの球状粒子

アルバイト表面でのスメクタイトの生成 鉱物を溶解するバクテリア

火山灰堆積物中のバクテリア H2S酸化バクテリアによって生成された
硫黄結晶

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