崩れ(野尻川)
 (文責・写真撮影:岩松 暉)
碑文:
両岸も川床も
堅固に施工された川の中ほどを
細い流れが小早くおりていく。
いかにも小雨のしぼれ水
といった程度の、
ごく普通な流れだ。
それが突如として、
なんともいいがたい音響とともに、
川幅いっぱいに濁流が、
高く立ち上がって、
襲いかかってきた。
それを見た瞬間に私の感じたものは、
生きもの、ということだった。
あの波頭をふりたてて
立ち掛ってきた状態を
「段波」と呼ぶのだそうだが、
エネルギッシュで、
威圧的で、おそろしい
       幸田 文