鹿児島大学理学部同窓会南明会のホームページ
会長挨拶



南明会会長 川畑 隆  

同窓会会員の皆様方におかれましては、日頃、母校鹿児島大学理学部への思いや同窓生同士の交流などから同窓会への関心をお持ち頂き厚くお礼を申し上げます。

さて、去る平成二十三年三月十一日午後二時四十六分、東北地方宮城県沖から福島県沖を震源域とする大地震は大津波を誘発し、更に人災ともいうべき東京電力福島第一原発の放射性物質拡散という我が国史上最大のシビアアクシデント(過酷事故)を起こしました。その日から今日(平成二十四年一月十一日)で満十ヶ月。すぐに影響の出ない放射能被害に一部世論はまるで終わった話のつもりになっているかのようです。被害が出るのはずっと後のことだというのに。年初の御挨拶に益々御健勝にて・・・・とお慶びを申し上げるべき言葉もなく、只々残念という思いしかないのです。

 地震国日本で、列島全体に設置された五十四基もの原発に囲まれた国民の不安たるや。この上ないものではないでしょうか。まして世のリーダー達が一連の大事件(事故)を【想定外】であったかのような言説で逃げようとするその姿勢と、政府の言う“復旧復興”のスピード感の無さが苛立たしいのです。

また、原発運転制限四十年とは言いつつ経過措置があること、また、既存原発を「寿命が来れば廃炉にする。」と言いながら規定がないことなど、さらに、薩摩川内市では三月を目途に見直す原子力防災計画で住民避難先を原発から三十キロ以遠にする方針を明らかにしました。

私がこの報道を見てこの上ない衝撃を受けたのは、それがつまり、今後も原発の稼働を続けるということであり、同時にその原発が安全でないということを意味するものだからです。ひとたびこの計画経済的な混乱と苦しみを思うとやり切れません。東日本大震災による福島第一原発事故の大惨事を思うとき、当原発に多大な不安を感じずにはいられません。原発の安全性確保について、その存廃を含めて早急な対策を強く求め願う次第です。

 さて、昨年の理学部通信第五号にも述べさせて頂きましたが、本年は我が鹿児島大学が目指す『進取の精神』を個々においてもより強固なものとし、地球的視野で時代の変革と近代化の流れを見極め、「強い意志」と「柔軟な心」を持って自己実現を計りながら、広く多くの仲間との友情を育み、思い遣りのある魅力溢れる人間に成長していただくとともに、これまで以上により密接に地域社会と関わる中で、広範な社会貢献をなされるように願うものです。

昨年一昨年と学長自ら学生達と共に南米の地に足を運ばれ、鹿大同窓会ブラジル支部を訪ねられたことで、大学間の交流の輪が広がり、今後益々近隣諸国との支援・協働の動きが盛んになることを期待するものです。

 そして平成二十四年(十一月第三土曜日予定)は、理学部同窓会(本会議(役員交代等))が実施される年に当たりますので、母校発展と皆様方の多くの御出会を祈念申し上げます。

 最後に理学部通信第六号の発行に際し、同窓会顧問の学部長様を始め、編集委員会の先生方、各学年選出の編集委員の方々、原稿依頼に御協力を頂きました同窓会の皆様方には心より御礼申し上げ、今後とも御支援賜りますようお願い申し上げて、会長の挨拶とさせて頂きます。

 平成24年1月11日


理学部同窓会南明会 会長 川畑 隆

鹿児島大学理学部同窓会会員の皆様には、日頃から同窓会の活動にご理解とご協力をいただき、感謝申し上げます。

昨年は、11月17日に理学部同窓会総会が開催され、関東支部会の満田会長様、宮嶋理学部長様などの御参加を仰ぎ、盛会のうちに無事終了致しました。特に、今回は新副会長として、本学物理学科の古川一男先生、および、鹿児島県立大口高等学校校長の山下茂久先生のお二方を選出いたしました。理学部同窓会の運営には心強い人選かと存じます。また、総会の質疑応答では、理学部同窓会の運営に当たって、同窓生の皆様から数々の御提案を頂きました。年々、参加数が先細りになっている同窓会総会への参加者を増やしていく方策、卒業年度ごとに各学科で同窓会幹事を置く案、近々立ち上げ予定である関西支部会との連携、等々の大変有意義なアイディアが出されました。これらの御提案を今後、同窓会執行部として真剣に検討していきたいと思います。

さて、東日本大震災と東京電力福島原子力発電所事故の発生から、間もなく2年が経とうとしています。震災の被災地では、復興・復旧への取り組みが続く一方で、新しい年を迎えるこの時も、多くの方々が故郷を離れ、避難先で不自由な生活を余儀なくされていることに胸が痛みます。しかし、既に世の中の関心は、震災関連ではなく、どうすれば経済が活性化するか、どうすれば国際的な威信が増すか、どうすれば国際競争に勝ち残っていけるのか、等々、勇ましい話題に移っているかのようです。メディアは、地道な復興活動よりも、他者を激しく攻撃する人々、一見華やかだか中身の無い空疎な内容を雄弁に語る人々を好んで伝えています。何か、犯人捜しをやって誰かを責め立てても事態がすぐに好転するはずがありません。他者の痛みや悲しみを共有し、倦まず弛まず辛抱強く地道に実績を積み上げていく行為こそが評価されるべきです。

振り返れば21世紀は、2001年9月のアメリカ同時多発テロに始まり、湾岸戦争、2008年のリーマンショック、日本では失われた20年の言葉に象徴される経済の停滞、そして、2011年3・11の東日本大震災と原発事故問題と、世界の政治、経済、社会の体制や仕組みを大きく変える出来事が次々に生じ、もはや過去を振り返って未来を延長線上に予測することが困難な時代を迎えつつあると指摘するむきもあります。

かのヘーゲルは、「人類が歴史から唯一学んだことは、人類が歴史から何も学んでいないということだ。」と申しました。しかし、現在が、まさに恐らく歴史的転換点にある時代にあるにも関わらず、予測が難しいという状況にかこつけて、誰も過去の歴史から何も学び取ろうとしない姿勢にこそ大きな問題があるのではないでしょうか。昨年末に行われた日本の総選挙では、多数の政党が乱立し、選挙の争点自体がぼやけてしまい、観念的な理念ばかりが先行する結果となってしまいました。現在の日本の政治状況は、少数政党の乱立が国民による政治離れを招き、独裁政党の伸張を招いたドイツのワイマール時代に酷似しているとも言われています。

昨年の夏以来、国民的な盛り上がりを見せ、「国論を二分する」とまで報道されていた原子力政策は、総選挙では関心の低い話題となってしまいました。

世論調査をすれば7?8割の国民が「脱原発」という立場を表明していますが、政策は逆もどりした感があります。また、日本国内の経済格差や貧困は年を追うに従って深刻の度を深めていますが、総選挙で主張されていた内容は「自助」強調路線でした。簡単に言ってしまえば、「どんなに生活に困窮しても国に迷惑はかけずに自分でなんとかして下さい。」というものです。しかし、このような政策の支持率はわずか7%に過ぎないことが明らかになっています。社会が貧困にあえいでいても「放置しますよ」と公言している集団が圧勝してしまう不可思議さがここにあります。

今回の政権交代の大きな要因は、国民による政権政党への失望感であり、決して野党の掲げた政策への期待感ではなかったとされています。政治の閉塞感が強まるほどに、政治に無関心、無責任になる思考停止状態が社会に広まりつつあるようです。総選挙の著しく低い投票率が端的にその状況を表しているのではないでしょうか。インターネットの世界では、不祥事を起こした者に対する社会的リンチに等しい吊し上げや無責任な誹謗中傷が横行してい
ます。単なる「懲らしめ」や「失望」が、人々の行動の動機づけになってしまった社会が、破滅的な道を歩み始めることは、まさに過去の“歴史”が示している通りです。
 
ひるがえって、理学部通信第五号・第六号にも述べさせて頂きましたが、我が鹿児島大学は『進取の精神』が大学憲章にうたわれています。この理念は、個々人の価値観を強固なものとし、地球的視野で時代の変革と近代化の流れを見極め、「強い意志」と「柔軟な心」を持って自己実現を計りながら、広く多くの仲間との友情を育み、思い遣りのある魅力溢れる人間に成長していただくとともに、これまで以上により密接に地域社会と関わる中で、広範な社会貢献をなされるように宣言したものです。不確実性を深めつつある日本の現代社会においては、鹿児島大学憲章がうたう、自らを見失うことの無い、この「進取の精神」の思考を持つ人材が強く求められるのではないでしょうか。鹿児島大学理学部の学生、教職員、卒業生の皆様方におかれましても、この大学憲章の理念をかみしめ、時代の荒波を乗り切っていこうではありませんか。 
 
最後に理学部通信第七号の発行に際し、同窓会顧問の学部長様を始め、理学部同窓会委員会の理学部通信編集委員の先生方、各学年選出の学生編集委員の皆様方、原稿依頼に御協力を頂きました同窓会の方々には心より御礼申し上げます。鹿児島大学理学部のさらなる発展と、同窓会のますますの結束、活躍を祈念してやみません。今後とも諸兄姉の皆様にはご指導、ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申し上げ、会長の挨拶とさせて頂きます。

 平成25年1月12日




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