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[修論発表会講演要旨]
薩摩半島,四万十層群風化砂岩中にみられるコアストーン構造の物理的・鉱物学的性質について


Physico-Mineralogical Studies of Core Stone Structure in Weathered Sandstone of the Shimanto Group, in Satsuma Peninsula


 風化岩中には,しばしばコアストーン構造(たまねぎ状構造)とよばれる風化形態がみられることがある.コアストーン構造は新鮮なものから砂状に風化する過程の途中段階でみられる風化形態で,コアをなした新鮮な部分の外縁部には剥離面が球状に分布し,さらにその外側では砂状をなしている.このコアストーン構造はその詳細な形態, 形成機構についてほとんどわかっていない.
 薩摩半島では,著しく風化した塊状の砂岩(四万十層群)が広く分布しており,厚く残されている風化殻中にはコアストーン構造が数多くみられる.そこで今回,これらの形態およびその物理的・鉱物学的性質を明らかにするため,これらを定性・定量的に検討した.
 コアストーン構造は風化殻中の特定のゾーンに集中している(zone B).しかし, まれにzone Bより上方の表層部分(zone A), 下方の比較的新鮮な部分(zone C)においてもみられる.zone B における個々のコアストーン構造の形態についてみてみると,以下のような結果が得られた.(1)球状および楕円体状をなし, 外周部は節理面により区切られている.(2)コアストーンの外縁部をとりまく微小クラックはコアストーンの外縁部沿いに均一に分布しておらず,場所により数が異なる.(3)コアストーンの外周部をとりまく節理面においてこれらが互いに交差している周辺(角部)では, 微小クラックの数は少なく, 節理面に沿った部分では微小クラックの数が多い.(4)微小クラックの間隔と指標硬度との間には負の相関がみられる.
 次に,コアストーン構造における物理的・鉱物学的性質をみると,(5)岩石の物性値,構成鉱物(石英)内の割れ目の状態はlevel T(コアストーン部分),level U(球状剥離部分),level V(砂状部分)においてそれぞれ異なっている.さらに, 各々のゾーン(zone A,B,C)でみられるコアストーン構造は同様の物理的・鉱物学的性質を有している.(6)level T,Vにおける岩石の粒度組成もそれぞれ異なっており, levelVにおける構成鉱物の粒度はlevelTのものより小さい, ことがわかった.
 以上のことから, (2),(3)より, 角部は2つの節理面からの影響を受け, 風化の進行がかなり速いため, 微小クラックが数多く形成される前に砂状に分離していると考えられる.さらに, 節理面の交差する角と風化の進行速度との間には何らかの因果関係があると思われる.(4)からは, 既存の研究結果からみて, 微小クラックの形成にともなう指標硬度の低下は岩盤の乾湿のくり返しによるものと推察される.また, (5)より, 各々のゾーン(zone A,B,C)でみられるコアストーン構造は, 大きさ, 球状剥離部分の厚さなどの点で多少異なってはいるものの, どのゾーンにおいても同じ風化過程をたどっていると考えられる.(6)からは, 砂状部分における岩石の粒度は風化の際に変化した可能性が高く, これは, 構成鉱物が風化により細かく分断されていることと一致している.よって, 元々, 砂状部分での岩石の粒度はコアストーン部分のものと同じであったといえる.


[夏休み研究成果報告, 1996]

薩摩半島,四万十層群風化砂岩中にみられるコアストーン構造の形態および その機構について

目的・・・・・この地域の砂岩の風化帯(四万十層群)に特徴的にみられるコアストーン構造を,物理的, 化学的方面から定性・定量的に検討することで,これらの形態および機構を明らかにする.
当地域にみられる砂岩の風化殻中のコアストーン構造は山体レベルでみてみると,風化殻中のある一定したゾーン(zone B)で頻繁にみられることがわかっている(夏休み研究成果報告,1995).今回はさらにこのzone B中でみられる個々のコアストーン構造の形態,機構を明らかにするため,これらを物理的,化学的方面から検討してみた.コアストーン構造をよくみてみると,中心部(コアストーン部分)では岩石が風化されず新鮮であったり,球状剥離部分では岩石が剥離面により分断されていたりするなど,場所により風化段階にちがいがある.このことから今回,コアストーン構造を風化段階のちがいから,中心部よりそれぞれlevelT,U,Vと区分した.
levelT・・・・・球形もしくは楕円形をなしたコアストーン構造の中心部にみられる.岩石は風化しておらず,新鮮で灰〜青灰色を呈している.この部分には剥離面は存在しないが,周辺部には球状をなした剥離面がこれらをとり囲んでいる.また,岩石の物性をみると,有効間隙率は1.0〜4.0(%),みかけ比重は2.4〜2.6の値を示す.さらに,石英中の割れ目をみてみると,開口した明瞭な割れ目はほとんどみられず,密着した不明瞭な割れ目がみられる.
levelU・・・・・コアストーン部分(levelT)の周辺部を取り囲むように存在し,球状をなした剥離面が数多くみられる.岩石はlevelTのものに比べると風化しており,剥離面により岩石が分断されている.色は灰褐〜褐色を呈している.岩石の物性は有効間隙率で4.0〜12.0(%), みかけ比重で2.2〜2.5の値を示す.また,石英中の割れ目をみると,開口した明瞭な割れ目が石英を大きく区切っている.そして,これらの明瞭な割れ目から枝分かれに密着した不明瞭な割れ目が発達している.
levelV・・・・・球状剥離部分(levelU)よりさらに外側でみられる.岩石は著しく風化し, 黄褐〜褐〜淡褐色を呈している.構成粒子も完全に分離し,砂状をなしている. ここでの岩石の物性は有効間隙率で12.0〜30.0(%),みかけ比重で1.9〜2.2の値を示す.また, 石英中の割れ目をみると,開口した明瞭な割れ目が大部分を占め,結晶が粉々に砕かれている.
 なお,コアストーン構造の機構については以上にあげたデータだけでは十分説明できないため,今後さらに, これらの物理的,化学的なデータを得る必要がある.
コアストーン構造における風化段階のちがいによる区分(levelT,U,V)

[夏休み研究成果報告, 1995]

薩摩半島,四万十層群風化砂岩中にみられるコアストーン構造の形態およびその機構 について

 薩摩半島に分布する四万十層群中の砂岩(おもに塊状)は,著しく風化しており,球状に残された新鮮な部分(boulder級)が特徴的にみられる。しかし,このような形態をなした砂岩岩盤は,北薩地方や九州山地などの地域に分布する四万十層群中にはみられず,風化帯が厚く残されているという点に関して言えば,薩摩半島に分布する四万十層群は特異的といえる。
そこで今回,この特異的ともいえる砂岩(四万十層群)の球状風化の部分に着目し,これらの形態的な特徴を定性・定量的な面(色調,強度,有効間隙率等)から検討することにした。そして,このような球状をなした部分が数多くみられる金峰ダム周辺域(薩摩半島中部)を中心に地表踏査,測定等を行った。
 金峰ダム周辺域の砂岩(四万十層群)の風化帯の厚さは,露頭の分布状態からみてかなり厚く残されていると考えられ,球状に残された新鮮な砂岩がみられる。しかし、球状をなした部分は風化帯の一部のゾーンにしかみられないことから、今回、この部分が風化帯のどの位置に分布しているのかを知るため、風化帯を表層部からそれぞれ、zoneA、B、Cと区分した。
zoneA....... [厚さ〕5m+
 砂岩岩盤は著しく風化しており、ハンマーを軽くたたくだけで簡単に崩すことができる。構成粒子は完全に分離し、砂状を呈している。大部分は黄褐〜褐〜淡褐色を呈しているが、まれに灰〜青灰色の新鮮な部分が球状となってとり残されている。岩盤の大部分はCL級であるが、赤色化した粘土質な部分や割れ目の著しく開口した部分はD級である。
zoneB....... 〔厚さ〕20m+
 砂状を呈する岩盤中の所々に新鮮な部分がみられ、これらはいずれも球状をなしている。砂状を呈する部分はハンマーにより簡単に崩すことができるが,新鮮な部分はハンマーを強打してもなかなか割ることができない。著しく風化した部分(砂状を呈する部分)はCL〜D級を示し、黄褐〜褐〜灰褐色を呈する。新鮮な部分は中心部へ向かうに従いCM〜B級を示し、灰〜青灰色を呈する。
zoneC.......
 砂状を呈した部分がほとんどみられなくなり、岩盤の大部分がブロック状をなしている。色は褐色、灰褐色、灰〜青灰色を呈する。ブロックは節理面等によって区切られており,中心部へ向かってCM〜B級を示す。なお,この部分はハンマーで強打してもなかなか割ることができない。また、ブロックが細かく区切られているところではCL〜CM級を示す。
 これらの区分方法は主に露頭の状態、色調、ハンマーによる強度等といった定性的な面からのもので、今後、強度,有効間隙率等といった定量的な面を検討する必要がある。
砂岩岩盤の風化帯区分図(断面図)


学会発表

福井克樹・岩松 暉・横田修一郎(1995): 四万十帯強風化砂岩地帯における斜面崩壊の分布とその特性.日本地質学会第102年学術大会講演要旨,p.303.
福井克樹・岩松 暉(1996): 薩摩半島,四万十層群風化砂岩中にみられる球状剥離の形態. 日本地質学会第103年学術大会講演要旨.

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連絡先:gse-katu@sci.kagoshima-u.ac.jp
更新日:1997年2月22日