ステレオグラフ
Stereographic Projection

鹿児島大学理学部地球環境科学科
岩松 暉
ステレオ投影
鹿児島大学理学部地球環境科学科 岩松 暉
1.ステレオ投影

通常地質図学で扱う問題は,初等幾何学を用いて解くが,かなりわずらわしい手続を必要とする。しかし,面や線相互の角度の関係を示すだけならば,もっと簡便な方法がある。その一つが球面投影法 spherical projection である。これは,任意の半径の球を仮想し,球の中心から目的の方向に向って直線を引き,球面と交わる点を求めて,その方向を代表させる方法である。恒星相互の関係を示すために,地球を中心とした天球に投影するやり方はその例である。この場合,地球と恒星との距離は星によって異なるけれども,同一の天球に投影するわけである。これでは,恒星相互の距離を表すことはできないが,地球から見たときの位置関係(視角距離)は正しく示すことができる(図1)。
球を平面で切断したときの切り口は必ず円になる。切断面が球の中心を通る場合の切り口を大円 great circle といい,その他の場合を小円 small circle という。大円の面に垂直に球の直径を引くとき,その直径の両端に当る球面上の点をその大円の極 pole という。球面上の2点間の距離は,その2点を通過する大円弧が球の中心において張る角(角距離)をもって表す。球面上の円の半径や直径も角距離をもって表す。
Z = zenith天頂
1.1 ステレオ投影の原理
O C’ B’ B C D A S N N = nadia天底
空間における方向関係を示すのに球面投影が便利であることは既に述べたが,これをさらに平面に投影するやり方の一つが,ここで解説するステレオ投影 stereographic projection である。いま,天頂Zに視点をおき,球面上の点Cを見たとする(図2)。Zを極とする大円,すなわち基円
primitive circle と視線との交点をC’とすれば,C’が求める投影点である。同様にして,大円ABCDはステレオ図上ではAB’C’Dで表される。このように天頂を視点とするやり方を下半球 lower hemisphere 投影といい,その反対に天底を視点とするやり方を上半球投影という(地球になぞらえて北半球投影・南半球投影と呼ぶこともある)。上半球投影は,鉱物学や岩石学で用いられるが,地質図学や構造地質学では傾斜やプランジを問題にすることが多いので,一般には下半球投影を用いる。以下,すべて下半球投影を用いる。
図3は,球面上の点Pを含み,かつ基円に直交する面で切った切り口の図である。球面上の点Pと天底との角距離をθ,基円の半径をrとすれば,ステレオ投影点P’は基円の中心Oから
だけ隔たったところに投影される。
1.2 ステレオ投影の特徴
一般に球面上の図形を平面に投影すれば,歪みの生ずることは避けられない。このステレオ投影では,球面上で等面積の2つの図形が,投影図上では一般に不等面積に表されるような歪みがある(等面積投影については次節で述べる)。しかし,次のような優れた特徴がある。
@ 球面上の円は(大円も小円も),ステレオ投影図においても円で表される。ただし,投影面に垂直な大円は,直線として表される。
A 球面上において相交わる2つの大円の間の角は,ステレオ投影図上においても,これに相当する2つの大円の間の角として,そのまま表される。
<演習>
上記2点を証明せよ。
1.3 ウルフ網
ステレオ投影図上に,投影面(紙面)に垂直でかつ互いに直交する2つの大円(互いに直交する直径として表れる)を描き,その一方の大円に平行な多数の小円を等間隔(この場合は2゜おき)に描く。次に,これら小円のすべてに垂直な多数の大円を等間隔に描く。このような図をウルフ網 Wulff's stereographic net, Wulff net または子午線ステレオ網 meridional stereographic net, meridian net という(図4)。単にステレオ網 stereonet ということもある。この作図の仕方は以下の通りである。計算図表として使用するだけなら,市販のステレオ網を用いればよいが,コンピュータプログラムを組むためには,原理を知らなければならないので作図法を解説する。また,論文付図を作成する場合も,作
図法を知っていれば,コンパスできれいに製図できる。
いま傾斜δの面OPを考えるとき,走向に直交する球の切り口は図5のようになる。したがって,Pの投影点はP’となる。ここで,この切り口を90゜回転させて基円と考えたとき,Z,P’,Nを通る円弧を描けば,これが投影図上の大円になる。このときの中心Cδは,ZP'およびNP'の垂直2等分線OからOCδ=rtanδ隔たった点Cδを中心として,半径CδZ=rsecδの円弧を描けばよい。
次に,ステレオ投影面に垂直な半径ρの小円を描く。ステレオ投影面に垂直な小円の中心は基円の周上にあるから,その投影点をPとして,Pを含み小円に直交する球の切り口を描けば,図6のようになる。上と同様に考えて,L,M’,Mを通る円弧を描けば,これが求める小円の投影図である。図から明らかに,∠OMCρ=∠Rであるから,基円の中心OからOCρ=rsecρ隔たった点Cρを中心として,半径CρM=rtanρの円弧を描けばよい。
以上述べたやり方に従って系統的に作図するためには,図7のようにする。左図ではOCδ=rtanδ,右図ではOCρ=rsecρになっていることは図から明白である。
1.4 ウルフ網の使用法
ステレオ網を使用する際には,いつも図2に示されているような半球状のボール bowl を上から見ているのだということを忘れてはならない。そして,面や線がボールの内側とどのように交わるかを考えて(頭の中で立体を仮想する)から投影することが大切である。
市販の回転作図板があれば一番便利であるが,ないときには,ネットの上にトレーシングペーパーを重ねて中心を針で留め,トレーシングペーパーを自由に回転できるようにすればよい(図8)。このとき,トレーシングペーパーには,ネットの基円と半径の等しい円や東西・南北の直径を書いておくとよい。また,北には矢印を出しておき,NまたはmN(磁北)を記入しておく。
以下,例題をもとに,使用法を解説する。
@ 面の投影
<例>N30゚E,40゚Eの面を投影せよ(図9)。

まず,(a)のような位置関係にあることを頭の中に想い浮べる。そうすれば,投影図上では(c)のように,南東側に大円が描かれることがわかる。このように結果を予想しながら作業を進めるのである。まず,トレーシングペーパーを反時計回りに30゚回転する。つまり,走向が東へふっているならば西へ回転し,走向が西へふっているならば東へ回転する。そこで,左図のような状態になったとき,基円から数えて40゚のところを通る大円に沿って弧を描けば,これが求める解である。なお,極Pはこの状態での東西直径に沿って大円から90゚の点,すなわち,ネットの中心から40゚の点である。この際に,大円を中心から数えて40゚のところに描いたり,極を基円から40゚のところにプロットしたりする過ちを犯す人が多い。面は,水平(傾斜0゚)の場合は基円になり,垂直(傾斜90゚)の場合は中心を通る直線になるから,その位置から少しずつ傾けたと考えれば間違うことはない。極についても同様,水平の場合は基円の中心になり,垂直の場合は基円上にくる。両極端から中間傾斜の場合を予想すればよいのである。
A 線の投影
<例>S42゚Eへ30゜プランジしている線を投影せよ(図10)。
S42゚Eの方向が南北直径(東西でも可)にくるように回転する。すなわち,右へ42゚回転する。その位置で基円から30゚のところが求める点である。
B 線を含む面の投影
<例>面N-S45゚Wと,その面上にある線N36゚W(31゚)を投影せよ(図11)。

断層面上の条痕などが,この例である。まず,@の方法で面を描く(実線)。次に,回転して(図の位置),Aの方法で線をプロットすれば,その点は先の大円上に載るはずである。もしも載らなかったとすれば,線の測定値に誤差があったのであろう。クリノコンパスで測定した場合,プランジ角は鏡の横の目盛で読むから大きな誤差が出やすい。なお,この線のレークは元の破線の位置まで戻して,大円に沿って角度を読めば46゚と求まる。したがっ て,クリノコンパスを持っていない人は,断層面上にクリノメーターで走向線を引き,分度器を直接断層面に当てて条線のレークを測定してくれば,この方法で方位角とプランジ角が求められる。
C 見かけの傾斜を求める
<例>面N50゚E50゚SEのN80゚E方向の見かけの傾斜を求めよ(図12)。
まず,@の方法で面を描く。次に,AによってN80゚Eの方向が南北あるいは東西の直径と一致するところまで回転し,直径上で基円からの角度を読めば31゚と求まる。
D 真の傾斜を求める
<例>2つの見かけの傾斜(1)30゚,N45゚W,(2)22゚,N14゚Eが与えられたとき,真の傾斜を求めよ(図13)。
Aによって,(1)(2)の点をプロットし,両者が同時に載るような大円を見つければよい。なお,両者の間の角度は,この大円に沿って読めば直ちに求められる。
E 2面の交線と2面角
<例>2つの面P1:N70゚W20゚S,P2:N50゚E60゚Sが与えられている。交線の方向とプランジおよび両面のなす角を求めよ(図14)。
@の方法で2つの面およびその極を投影する。両大円の交点が交線の方向を示している。この例ではS38゚Wへ19゚プランジしている。次に,この交点を極とする大円P3を描いて,2つの大円P1,P2との交点間の角度を読む。これが両面のなす2面角である。なお,大円P3は2面の極p1,p2も通る。2面角はこの両極のなす角を読んでもよい。もちろん,2面のなす角は,前述したように,投影図においても実角で表されるから,交点において,それぞれの大円に接線を引き,その間の角度を読んで,先に求めた値と等しいことを確かめて欲しい。
F ある面への線の正射投影
<例>N59゚Eへ46゚プランジしている線L1の面P1(N40゚E40゚N)への正射投影を求めよ(図15)。
P1と直交する面はすべて極p1を通る。DによってL1とp1を通る大円を描き,P1との交点をL2とすれば,L2が求めるL1の正射投影である。なお,L1とP1のなす角は,この第2の大円に沿って読めば直ちに44゚と求められる。
G 回転
回転軸Rが図16左のように基円の中心を軸に回転する。また,回 転軸が水平の場合には,図16右のように,各点は小円に沿って移動する。例では,N30゚W40゚Eの面を南北軸を中心に南から見て時計回りに30゚回転すると,N72゚W20゚Nになることを示している。
回転軸Rが傾斜している場合には,図17のような傾斜したステレオ網があれば好都合だが,傾斜角に応じた多数のネットが必要となるから実用的ではない。それではどうするか。回転軸を1回水平まで戻して,それから求める角度回転し,しかる後回転軸を元通りに戻すのである。つまり,まずRの走向線を中心に水平まで回転する。それに応じてRと面Pの極pはR',p'へ移動する。次にR'を中心に上の方法で回転してやるとp'はp"へ移動する。その後,Rを元の位置に戻せば,それに応じてp"が移動したところが求める面Pの回転先である。
直接に求めるには次のようなやり方もある。
<例>面P(N83゚E52゚S)を回転軸R(30゚,N42゚E)を中心に,南西側から見て時計回りに80゚回転せよ(図18)。
まずRを極とする大円⊥Rを描く。面の極pおよびRを含む面とこの面との交点をLとする。Rを軸にpを80゚回転するということは,Lを大円⊥Rにそって80゚回転することに等しい。こうして回転した後の位置をL'とすると,pはこの大円RL'上にある。pR=41゚は回転しても不変であるから,RL'上にRから41゚のところをp'とすれば,これが求める回転後の面の極である。
H 褶曲構造の復元 Unfolding
<例>北へ30゚プランジする背斜がある。その東翼でN19゙W60゚Eの層理面に東西方向の底痕が見られた。古流向を求めよ(図19)。
古流向を求めるには,走向線を軸に水平まで倒して,底痕の方位を復元するやり方がしばしば行われる。しかし,褶曲軸が水平に近い場合はよいが,褶曲軸がかなり傾斜しているときには誤差が大きくなる。やはり,unfolding をきちんと行わなければならない。
[解1:図19左]まず,褶曲層を平板に戻す(P→P')。このとき,褶曲軸Bと線構造L(古流向)との角度は変らない。さらにプランジの分だけ水平に戻す。
[解2:図19右]まず,プランジの分だけ水平に戻し(P→P'),次に褶曲層を平板に戻す。
1.5 平均方位の求め方

ステレオ網上に投影された点がばらついて1点に集中しない場合,その平均方位を必要とする場合がある。与えられた点の方位を,球の中心からその点に向う単位ベクトルで表すとき,平均方位はいくつかの単位ベクトルを合成して得られる合成ベクトルの方位で示すことができる(図20)。したがって,2点の平均方位はステレオ網上で2点間の中点で示される。このとき,中点は2点を通る大円上にある。3点以上の場合は,図21に示すやり方で求められる。
このやり方だと,点の数が多くなると,大円の数も増え,トレーシングペーパーを回転させるのがわずらわしい。そこで,図22のような幾何学的重心を求めることが行われる。これは近似解であって,厳密には誤差が出るが,実用上は差し支えない。


2.等面積投影
構造地質学や構造岩石学では,ファブリック要素の定向性を問題にすることがしばしばある。そのために,図上にプロットされた点の統計的処理が行われる。ところが,ステレオ投影では,前節で述べたように,球面上の等しい面積は,一般には投影図上で等しく表されない。そこで,球面上の密度が平面図上に正しく表される投影図法が要求される。このような投影法を等面積投影 equal-area projection という。考案者の名をとってランベルト投影 Lambert projection ともいう。
2.1 等面積投影の原理
図23のように,視点を天頂におく(下半球投影)。天底に接する平面を投影面として,NP=NP'なる点P'を投影点とする。もちろんPとP'は同じ経線上とする。このとき,NP'=2r・sin
である。ただし,これだと基円の大きさが球の
倍になってしまうから,
で割ってNP'=
r・sin
とする。
この図法が等面積である条件を求めてみよう。これは面拡大率(投影面上の面積÷球面上の面積)が1であるということである。これを求めるために,まず,経線拡大率と緯線拡大率を知る必要がある。図24および図25において,
経線拡大率 ![]()
ここで,△X =AB = r△α
![]()
= 2rsin
-2rsin![]()
=![]()

緯線拡大率 ![]()
![]()
![]()

∴ 面拡大率 S = Lm・Lp = 1
よって,投影面上の面積は球面上の面積に等しい。なお,Lm<1,Lp>1であるから,投影された図形は経線方向で縮小され,緯線方向で拡大される。
2.2 シュミット網
このランベルト図法を構造岩石学に始めて応用したのが W. Schmidt(1925)である。図26は,ウルフ網と同様に,南北両端を結ぶ大円と,これに直交する小円とが2゚間隔に描かれている。シュミット網 Schmidt's net または等面積網 equal-area net という。ウルフ網と違って,曲線は円弧ではない。

2.3 シュミット網の幾何学的用法
面および線の方位をウルフ網とまったく同様にして投影することができる。しかし,角度の関係が正しく表されないから,こうした用法のためだけならば,なるべくウルフ網を用いたほうがよい。
2.4 ポイントダイヤグラム
シュミット網の統計的用法としては,第一に線方向もしくは面構造の極を多数プロットし,その点の分布状態(集中あるいはバラツキ)を調べる方法がある。このような図をポイントダイヤグラム point diagram という。
点をプロットするには,ウルフ網と同様な手続で行えばよいが,数が多くなると煩雑なので,図27のような同心円図を使うと,トレーシングペーパーを回転しなくてすみ,非常に便利である。ただし,面の極をプロットする際には,下半球投影の場合,傾斜方向と反対側の象限にくるので,注意を要する。線方向の場合は,プランジと同じ象限にくるから問題はない。
2.5 集中の型

統計的にランダムなものでは,点は網全体に散らばるが,変形ファブリックでは,大抵集中が表れる。この集中の型 types of concentration には,以下のような種類がある(図28)。
@ 一点集中(a maximum)
1箇所に点が集中するもので,一般にはっきりした重心がある。線構造がこのパターンを示すときには,線定向配列 linear preferred orientation があり,面構造の極の場合には面定向配列 planar preferred orientation がある。
A ガードル(a girdle)
ほぼ網の大円に沿うもので,この大円の極をガードル軸(girdle axis)という。多くのガードルは1つ以上の明瞭な中心を持つ。稀には2つのガードルが結合して,1つの “crossed girdle” をつくっていることがある。面構造がガードルを示す場合には,線定向配列がある。褶曲面に対する褶曲軸などが好例である。線構造によってガードルが生ずる場合は,そのガードルが面定向配列の面である。例えば,針状鉱物がある面内でランダムな配列をする場合,このガードルが片理面を示す。
B 小円(a small circle, "cleft" girdle)
ネットの小円に沿うもの,つまり girdle axis から一定の角距離にあるものである。通例は,ガードル内部に maxima を持つ。一般には回転の所産としてできる。
2.6 コンターダイヤグラム
ポイントダイヤグラムのパターンをもっと明瞭に,かつ,定量的に示すために,点の等密度線
density contours を引いたものがコンターダイヤグラム contoured diagram である。密度は,投影面の1%の面積に全ポイント数の何
%が入るかによって示される。
@ ポイントカウンター point counter
Schmidegg の考案したもので,両端にネットの直径の1/10に等しい円孔 counting circle がある(図29)。円孔間の距離はネットの直径に等しい。中央部に画鋲をさしてスライドできる程度の幅のスロットを切っておく。透明プラスチック製の定規などを用いて自作するとよい。円孔はドリルを用いればきれいに開けられる。
A 点の数の計測 counting
ポイントダイヤグラムの上に,別のトレーシングペーパーを載せて固定する。それにポイントカウンターの円孔内に入っている点の数の全ポイント数に対する割合を%数で記入するわけである。ポイントダイヤグラムに直接書いてもよいが,点と重なって見にくいのと,ポイントダイヤグラムは生のデータだから,なるべくそのまま保存しておいたほうがよいので,あまり感心しない。ネットの中にカウンターの円孔が完全に入る場合には,円孔のどちらかを当てて数える(図29a)。ネットの周縁にかかる場合には,図29bのように画鋲を中心にさして,スロットがネットの中心を必ず通るようにし,両円孔内の点の数を数えて合算する。
2.7 等密度線の引き方 counting
コンターは地形図の等高線や天気図の等圧線と同様,枝分れしたり,交わったりしない。また,必ず閉曲線になるから,コンターがネットの基円を切る場合には,直径を通る反対側に再び現れるはずである。コンターの数や間隔については,次のような基準を満たしていることが望ましい。
1゚ コンターの数は6本以内にすること。
2゚ 最高コンターで囲まれる部分はあまり小さくないこと。
3゚ コンターの間隔は一様なこと。
4゚ 最低コンターは,なるべくネットの1%面積につき1点の集中をとること。つまり,点が一つもない部分との境界線になるようにする。
5゚ 常に可能とは限らないが,同じ種類のデータを異なった対象から得た場合は,比較のために,同数の点を測定し,同じ間隔のコンターを引くのが望ましい。
コンターの引き方には,点の数の多少に応じて,以下のようないろいろなやり方が工夫されている。
@ Schmidt法(格子法)
点の数が非常に多い(通例400点以上)ときや,集中度の高い場合に最適である。まず,図30aのような,ネットの直径の1/20の格子を作り,その上にポイントダイヤグラムをおく。その上に更に第2のトレーシングペーパーを重ね,各格子の交点にカウンターの円孔の中心をおいて,その中に入る点の数を数える。もちろん,基円の周辺部で円孔がネットからはみ出す場合には,前述したように,反対側の円孔に入る点も合算しなければならない。次に,数えた点の数が全ポイント数の何%に当たるか計算して,その%数を格子点に記入する(図30a)。格子点が基円と重なった場合には,
基円の両端の格子点に同じ数を記入する。これが出来上がったら,等密度のところをなめらかな線で結んでコンターを描く(図30b)。そのコンターと等しい密度の点がないときには,付近の点から比例配分によって位置を求める。こうした内挿法は,天気図で等圧線を描くときの要領とまったく同じである。
A 自由描画法(free contour
method)
200〜400点で,個々の集中度が中程度のときには,この方法で十分である(図31)。まず,予察的にカウンターの円孔を動かしてみて,点の集中度の範囲とそれに適当なコンター間隔を決める。次に,円孔内に最高コンターの示す数以上の点が常に入るように保持しながらカウンターを動かして,円孔の軌跡として最高コンターを引く。残りのコンターは,密度を減らして次々と描く。コンターが基円と交わるところでは,カウンターのスロットをネットの中心に画鋲で固定して,両端の円孔内の数を合算して決める。この方法は,一見漠然としていてやりにくいように見えるが,慣れると短時間でスムーズに描けるようになる。これは,傾斜尺を用いて傾斜区分図を作るやり方と同じである。
B Mellis法(小円法)
この方法は,点の数が少ない(150点以下)とき,とくに最低コンター(通例1点コンター)を引くのに適している。一つひとつの点を中心に,カウンターの円孔を利用して1%面積の小円を描く(図32)。この小円の重なった数によって,色を塗っていけばコンターが出来上がる。小円が4つ以上重なると見にくくなる。利用上の制限があるが,誰がやっても厳密に同じコンターが引ける唯一の方法である。
C コンピュータの利用
以上の方法は,いずれも大変根気のいる作業を伴う。そこで,このような単純作業はコンピュータに任せるに限る。筆者は,ポイントダイヤグラムの作成から,コンターダイヤグラムの描画まで,全部自動的にやってくれるプログラムを開発した(日本情報地質学会誌参照)。
3 パイダイヤグラム

面構造の極を多数プロットした図をパイダイヤグラム(π diagram)またはS-pole diagram という。褶曲が円筒状褶曲
cylindrical fold の場合,地層面の極はガードルをなす。このガードルは褶曲軸に直交する面(いわゆるac面)を示し,その極は褶曲軸Bを示す。したがって,地層面の走向傾斜を多数測定してパイダイヤグラムを作ることにより,褶曲軸の方位を知ることができる(図33)。また,点の集中の仕方あるいはばらつき方によって,褶曲の形態をも推定することができる。例えば,図に示されているように,翼間角が小さくなるに従って,つまり,開いた褶曲 open fold から閉じた褶曲 tight
fold になるに従って,地層面の極はガードルの全体に広く分布するようになる。また,アコーデオン褶曲 chevron fold では,ガードルの上に2つの集中部ができる。さらに,ガードル上の集中の具合によって,褶曲軸面の方位も推定できる(図34)。
なお,このようなパイダイヤグラムによって構造解析できるのは,円筒褶曲の場合だけで,重複褶曲 superposed fold のように,褶曲軸のプランジが場所によって異なる場合には適用できない。褶曲軸が一定とみなせる小部分ごとに解析する必要がある。いずれにせよ,むやみと広い範囲のデータをプロットしても意味はない。パイダイヤグラムは万能ではないのである。やはり,野外での詳細な地質調査の結果を裏付け図示するための手段程度に心得ておいたほうがよい。もちろん,複雑な褶曲をしている地域で褶曲を予察するのに使って差し支えない。
4 ベータダイヤグラム

円筒褶曲の場合,地層面の交線の方向は褶曲軸の方向と一致する。そこで,地層面の大円を多数描いて,その交点の最大集中部から,褶曲軸の方位とプランジを求めることがしばしば行われる。このような図をベータダイヤグラムβ-diagram という(図35a)。大円の数をnとすると,交点の数はn(n-1)/2となる。図35bは大円の交点だけを抜き出したもので,図35cはそのコンターダイヤグラムである。もちろん,図35dに示したようにパイダイヤグラムの結果と一致する。データの数が少なくてパイダイヤグラムを描けないときに,褶曲軸の凡その方向を推定するのに役立つ。ただし,あまり数が少ないと,例外的なデータに引きずられてとんでもない結果が出る恐れもある。
5 ファブリックの解析
ステレオ投影は,構造岩石学でファブリックの解析にしばしば用いられる。とくに変成岩地域の構造解析に多用される。
5.1 面構造
層理面や片理面のように,異方性が明瞭で,面の出しやすい面構造はクリノメーターで直接走向傾斜を測定すればよいが,面が出にくい場合には,いろいろな方向の露頭面におけるトレースから間接に求めることがある。この場合,2個の見かけの傾斜から真の傾斜を求める方法が応用できる。
<例>次のデータによって,面構造の走向傾斜を求めよ(図36)。
露頭面の走向傾斜 トレースのレーク
N40゚E21゚SE 76゚S
N75゚W32゚N 20゚NW
N80゚E32゚S 76゚SE
N35゚W40゚SW 44゚NW
N12゚W45゚W 86゚S
《解》まず,露頭面における面構造のトレースをプロットする(最初のケースだけ例示してある)。これらの点を通る大円を描けば,答はN50゚W55゚SWと求まる。
5.2 線構造
図37のような針状(柱状)結晶による線構造があったとする。露頭面Pにおいては,この針状結晶の切り口は図のような楕円になるから,楕円の長軸方向に見かけの線構造が観察される。この見かけの線構造は,真の線構造の露頭面に対する正斜投影である。したがって,1.4で述べた方法を逆に使えば,真の線構造の方位とプランジを求めることができる。
<例>次のようないろいろの方向の露頭面で,同一の線構造による見かけの線構造を観察し,そのレークを測定した。真の線構造の方位とプランジを求めよ。
露頭面の走向傾斜 レーク 露頭面の走向傾斜 レーク
@ 水平 ; N76゚W C N30゚W65゚E ; 48゚N
A N12゚W85゙E ; 45゚N D N53゚E85゙SE ; 34゚SW
B N45゚E90゚ ;
44゚SW E N46゚W18゚SW ;
36゚NW
《解》Lowe(1946)の方法: 見かけの線構造と露頭面の極とを通る大円群を描けば,その交点が求める解である(図38a)。
《別解》Cruden(1971)の方法: 図38bにおいて,面Pと北とのなす角が小さくなると,楕円は円に近くなって,見かけの線構造の測定誤差が大きくなる。そのとき,Loweの方法では一点で交わらなくなる。そこで,大円群のパイダイヤグラムを描いて,その極を求めればよい。
5.3 線構造の変形
線構造が後に褶曲作用を受けたとき,その方向の変化は,褶曲機構によって異なる。したがって,逆に,線構造の変形から褶曲の機構を推定できる。
@ 曲げ褶曲 flexure folding のとき
曲げ褶曲の場合は,褶曲軸Bと線構造Lのなす角は不変だから,LはBのまわりに小円を描く(図39)。
A 剪断褶曲 shear folding のとき
スリップの方向Aからみた場合,線構造Lの方向は変らず傾斜だけ変化するから,LはAを通る大円を描く(図40)。
演習問題
1.走向N75゚E傾斜22゚Nの地層がある。N50゚E方向の見かけの傾斜をステレオグラフを用いて解き,計算で求めた結果と比較せよ。
2.下図において,断層破砕帯がA点に,石灰岩がB点に露出している。走向傾斜はそれぞれN66゚E50゚S,N22゚W40゚Wである。露頭線を描いて,その交線の露出点を求めよ。また,交線の方向とプランジを求めよ。さらに,Boulder Creekのどの点でボーリングをしたら,どのくらいの深さでこの交線に突き当たるか。

3.傾斜不整合がある。その上と下の地層の走向傾斜は,それぞれN20゚E30゚E,N30゚W40゚Wである。上の地層が傾動する前の下の地層の走向傾斜を求めよ。
4.N40゚Eへ24゚プランジする背斜がある。東翼の地層面(N5゚W32゚E)上に漣痕が観察された。その冠頂線のレークは北へ70゚であった。古流向を求めよ。
5.N25゚Eへ50゚プランジする褶曲がある。その逆転翼上で東へプランジする線構造が観察された。その点における地層の走向は南北である。褶曲前の線構造の方位を求めよ。
6.次のデータは,
アンティセティックな正断層
125∠50,155∠45,130∠45,130∠58,148∠63,120∠52,142∠53,132∠65,124∠60,133∠43
シンセティックな正断層
295∠85,285∠70,300∠63,335∠80,320∠83,290∠76,292∠74,330∠88
なお,上記の表し方は,最大傾斜の方位角(北から東回りに読んだ角度)と傾斜角を示している(沢田式クリノメーターで直読する値である)。したがって,125∠50はN35゚E50゚SE と同じである。
7.次のデータを用いてパイダイヤグラムを作り,下の問に答えよ。
N75゚W31゚N, N25゚W70゚E, N78゚W22゚N, N17゚W64゚W, N37゚W49゚E
N41゚W47゚E, N 5゚W54゚W, N22゚W74゚W, N14゚W75゚W, N26゚W56゚W
N43゚W39゚E, N 3゚E32゚W, N11゚W33゚W, N38゚W47゚W, N12゚W44゚W
N24゚W75゚E, N18゚E41゚W, N35゚W29゚E, N42゚W62゚E, N50゚W49゚E
N12゚W37゚W, N60゚W32゚N, N10゚W67゚W, N35゚E20゚W, N16゚W57゚W
N24゚W84゚E, N28゚W55゚E, N39゚W60゚W, N68゚E25゚N, N40゚W30゚E
N23゚W48゚W, N15゚W54゚W, N 5゚W49゚W, N25゚W80゚E, N10゚W68゚E
N14゚W50゚W, N25゚E30゚W, N 1゚E42゚W, N37゚W68゚W, N 4゚W58゚W
N51゚W41゚N, N23゚W66゚W, N28゚W75゚W, N33゚W44゚E, N35゚W58゚E
N45゚W50゚E, N17゚W43゚E, N44゚W43゚E, N19゚W54゚W, N29゚W86゚E
(1) 褶曲軸の方位とプランジ角をもとめよ。
(2) 褶曲軸面の走向傾斜を求めよ。
(3) 褶曲の概略の形態をスケッチせよ。
(4) ベータダイヤグラムを作ったとしたら,交点の数はいくつになるか。
8.次のデータは,露頭面の走向傾斜とその面における線構造のトレースのレークである。構造を解析せよ。
N80゚W30゚N(20゚W);N50゚E80゚N(30゚W);水平(N46゚W)
N 5゚E10゚E(40゚S);N72゚E20゚S(80゚W)
<応用問題> Drill Hole Data
ボーリングは回転しながら掘るのでコア観察では地層の傾斜はわかるが,走向はわからない。しかし,複数のボーリングで同一層を掘り抜いた場合には,求めることが可能である。
9.垂直な井戸が12.8mで鍵層を掘り当てた。このときのコア軸と層理面とのなす角は60゚であった。東へ60m離れた第2の地点で傾斜掘(N20゚Eへ30゚)を行ったところ,33.6mで同じ鍵層に突き当った。そのときのコア軸と層理面とのなす角は45゚であった。地層の走向傾斜を求めよ。
10.次のデータから地層の走向傾斜を求めよ。
試錐 井戸の傾斜 コアと層理面とのなす角
1 82゚,S37゚W 17゚
2 61゚,S21゚E 34゚
3 50゚,S7゚E 30゚
引用文献
Ragan,
M. D. (1973): Structural Geology -- An Introduction to Geometrical Techniques.
2nd ed. John Wiley & Sons. Inc. 208pp.
Turner,
F. J. & Weiss, L. E. (1963): Structural Analysis of Metamorphic Tectonites.
McGraw-Hill Book Co. 545pp.
