2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

鹿児島市地盤図


地盤図作成の経緯|もくじ|鹿児島平野の地下地質|沖積層基底面等高線図|液状化危険度

◆地盤図作成の経緯

 阪神大震災では、震度7のいわゆる「震災の帯」が軟弱地盤地帯と一致しているとして有名になりました。このような地盤災害対策を考えるにせよ、ジオフロントやウオーターフロントなどの開発を行うにせよ、何よりも地盤の様子を的確につかんでおくことが先決です。そこで、わが講座では鹿児島大学地域共同センターにおいて、工学部・農学部の先生方のご協力も得ながら、鹿児島県地質調査業協会との共同研究を行い、鹿児島市内のボーリングデータベースを作成しました。この膨大なデータを解析してこのほど『鹿児島市地盤図』が完成しました。出来上がった地盤図はA3版131ページ付図2葉の大部なものです。従来の地盤図は1969年に建設省が出したものですが、当時に比べてボーリングデータ数が桁違いに多いため、内容が一変しました。もくじと成果の一部を紹介します。

◆もくじ

鹿児島平野と鹿大キャンパス(237KB:地盤図扉写真より)
第 1 章 はじめに
第 2 章 地形的にみた鹿児島市
第 3 章 鹿児島市の地質概要と沖積層
第 4 章 主要なボーリングによる平野下の地質情報
第 5 章 平野下における地質分布と地質構造
第 6 章 鹿児島市平野部での地形・地質発達史
第 7 章 N値とその分布
第 8 章 地盤の物理的性質
第 9 章 地盤の力学的性質
第10章 地盤の動的特性について
第11章 地下水
巻末資料 ボーリング柱状図集
地質断面図集
鹿児島市主要部地形分類図
N値の水平方向変化図
液状化判定図等
付図-1 ボーリング位置図及び沖積層基底面の等高線図(s=1/25,000)
付図-2 鹿児島市市街地周辺の表層地質図(s=1/25,000)

◆鹿児島平野の地下地質

鹿児島市の沖積層模式断面図(横田原図)

 鹿児島平野の地下数10mの深度には、よく締まった(N値の高い)砂層ないし砂礫層が広く存在します。13万年くらい前に堆積した城山層(場所によってはもっと古い国分層群もあります)です。その上をシラス(2.4万年前)が覆っています。これらの地層がウルム氷期(約2万年前)による海面低下に伴って河谷として浸食された結果、凹凸に富む地形が形成されました。
 後期更新世~完新世のはじめ(約1万年前)にかけて世界的な海面上昇がありました。アレレード海進です。この間に海水面は標高-40m付近まで上昇しました。この時堆積したのが沖積層下部層で、河川成の粗粒な堆積物です。
 約6,000年前頃、縄文海進として知られている急速な海面上昇がありました。この時の堆積物が沖積層中部層で、シルト質が主体となった細粒堆積物です。貝殻がたくさん含まれた海成層です。
 その後、海水準はわずかに低下し、これに伴って甲突川と旧田上川からの土砂が、浅くなった内湾を埋めるように堆積しました。沖積層上部層です。沖積扇状地や湿地帯も形成されました。

◆沖積層基底面等高線図

沖積層基底面等高線図(南日本新聞による簡略化)

 上図は2,000本以上のボーリングデータからまとめた沖積層の基底面等高線図です。今から1万年ほど前、桜島が誕生した頃の鹿児島の様子を思い浮かべてください。後氷期ですが、まだ海水準は-40m程度でした。旧甲突川は西鹿児島駅→騎射場→郡元→鴨池新町と流れていました。城山から上之園町にかけて半島状に台地が突出しているためです。その後の海水準上昇に伴って河道が埋め立てられ、上之園町の半島が島になり、ついに水没すると、甲突川は流路を変え、現在のように東流したのです。

★沖積層基底面のアニメ★
 南日本新聞社のご好意により、上図のアニメを作っていただきました。いろいろな角度から俯瞰した約1万年前の古地形が見られます。上記タイトルをクリックしてみてください。movファイルです。Windows使用の方はヘルパーアプリにquick time movieを登録しておいてください。

◆液状化危険度

液状化危険度分布図

 地震時の液状化については、いろいろな判定基準があります。鹿児島の沖積地盤は、後背地がシラス地帯ですから、火山性の砂質堆積物からなり、一般的な砂に対して決められた基準を機械的に適用するのは危険ですが、仮に岩崎・龍岡の簡易法(一部修正)を適用すると、上図のようになります。加速度を250galと仮定した時のものです。やはり、旧河道や埋立地などが危険だと言えます。

[入手問合せ先] 非売品ですが実費でお分けします。下記にお問い合わせください。
 鹿児島地図センター(徳田屋書店) 〒892 鹿児島市東千石町4-21 Tel. 099-222-3264


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更新日:1996年2月5日