2017年1月19日
2017年1月20日付け南日本新聞28年で紹介されました。
◎共同発表者の氏名(所属)
三井好古(鹿児島大学大学院理工学研究科 准教授)
小林領太 (鹿児島大学大学院理工学研究科 大学院生)
小山佳一(鹿児島大学大学院理工学研究科 教授)
梅津理恵(東北大学金属材料研究所 准教授)
水口将輝 (東北大学金属材料研究所 准教授)
高橋弘紀 (東北大学金属材料研究所 助教)
◎研究のポイント
磁場によってMn-Al磁石の合成が飛躍的に促進(磁場を利用した選択的な磁石合成効果)します。この「磁場を利用した選択的な磁石合成効果」を利用することで、新規の高性能磁石合成法につながると期待されます。
◎研究成果の概要
「磁場が選択的に強磁性磁石を合成する」効果を見出しました。本研究によって、非磁性(磁石にならない)のMnとAlを原料とする合金でも、磁場中で熱処理することで、強磁性磁石になる化合物が選択的に作り出せる(磁場を利用した選択的な磁石合成効果)ことが分かりました。この効果を利用することで、新しい強磁性磁石の発見が期待できます。
◎ 研究成果の内容
従来、非磁性Mnと非磁性Alで構成されるMn-Al合金(ε型:イプシロン型)は、溶かして固めただけでは磁石になりません。Mn-Al合金で強磁性磁石(τ型:タウ型)にするためには、複雑な熱処理を行うか、微量の炭素を加えたMn-Al-C合金にするしかありませんでした。
私たち、鹿児島大・東北大の共同研究グループは、棒磁石の発生する磁場が砂鉄を吸い寄せることをヒントに、「磁場が合金の磁石の性質を安定化させる」ことに着目しました。東北大学金属材料研究所強磁場センターの強磁場超伝導磁石を使い、磁石の性質のないMn-Al合金(ε型)を、350℃で地磁気の30万倍の強い磁場を与えることで、強磁性Mn-Al磁石(τ型)へ転換させることに、成功しました。これは、磁場によって、非磁性の合金が自ら磁石になることを選択しています。
以上のように、磁場を利用することで、強磁性Mn-Al磁石を選択的に合成できることが明らかになりました。
◎ 今後の展開
ここまでの成果では、Mn-Al磁石が磁場によって選択的に合成できることを示す結果が得られました。しかし、まだ磁場の効果があることを実証した段階であるため、今後熱処理条件や、磁場強度を最適化することが必要です。また、本成果は「磁場が磁石を選択的に合成する」ということを示しています。そのため、磁場中で磁石を合成するという新しい合成法や、その合成法を利用した新たな強磁性磁石の探索といった展開の可能性があります。
◎発表論文
タイトル:Annealing temperature and magnetic field effects on the transformation in Mn-Al alloys
著者:Ryota Kobayashi, Yoshifuru Mitsui, Rie Y. Umetsu, Kohki Takahashi, Masaki Mizuguchi, and Keiichi Koyama
発表雑誌:IEEE Magnetics Letters Vol.8, 144704 オンライン版
◎研究グループ
鹿児島大学大学院理工学研究科(大学院生 小林領太氏、三井好古准教授及び小山佳一教授)、東北大学金属材料研究所(梅津理恵准教授、水口将輝准教授及び高橋弘紀助教)の共同研究として実施しました。磁場中合成では、東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センターの無冷媒型強磁場超伝導マグネットを共同利用し、磁気特性評価には、同研究所新素材共同研究開発センターの振動試料型磁力計を共同利用しました。
◎研究助成
本研究は日本学術振興会科学研究費「Mn基機能磁性体の相変化に対する磁場効果と磁場中合成の最適化に関する研究」の助成を受けて進められています。また、本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費「磁場中状態図と強磁場反応促進効果を利用した強磁性材料の創出」の助成を受けて進めました。