理学部長 清原貞夫
私たちを取り囲む大自然の中には不思議なことが一杯あります。この不思議に魅せられ,人類は有史以来、自然にみられる様々な現象を観察しそれが起こる理由を解明する努力を重ねてきました。この努力は数学、物理、化学、生物、地学など自然科学の基礎となる自然法則を見つけだし、新しい自然観・物質観・生命観の形成をはかってきています。理学とはこのようにして私たちの自然認識を豊かにし、社会の調和ある進歩に貢献することを目指す学問です。自然の不思議は理解が進めば進むほどさらに深く広くなっていくものですから、理学はその営みを終わるせることはなく新たな不思議の扉を開き続けるでしょう。
理学を志す動機は人それぞれです。私は幼児の頃より雑魚取りが大好きで、魚を釣り上げることに興味を抱き魚の感覚、特に嗅覚と味覚に関心を持ちました。「魚の匂いと味の感覚の世界」がどのようなもので、それがどのように餌取り行動と関わっているのかについて30年以上実験を積み重ね、最近やっとその答えが少しずつわかるようになってきました。さらに多数の魚の味覚中枢を比較生理o形態学的に解析することにより「脳の進化」という一般的な問題にまで研究が進み、ワクワクする日々を送っています。この研究の原動力は知的好奇心で、途中幾度か経験した挫折感や倦怠感を克服できたのもこの知的好奇心のお陰と思います。理学を志す人の共通点は、この高い知的好奇心を持ちそれを維持することだと思います。
理学部には約80名の先生がいます。その先生達は学生と大学院生と共同してこの要覧で紹介されているように様々な研究に真摯に取り組んでいます。ロケット基地がある宇宙県である鹿児島の理学部として、自然科学研究機構国立天文台とともに「天文広域精測望遠鏡」(通称"VERA")を使って私たちが住む銀河系の精密立体地図が作成されつつあります。附属南西島孤火山観測所では霧島、桜島から南西諸島までの地震と火山活動の解明に取り組み、社会に情報を発信しています。日本学術振興会より援助を受けて「熱帯域における生物資源多様性保全のための国際教育プログラム」を展開し、人類が直面している地球環境問題の解決への貢献を目指しています。自然科学の根幹をなす数学は、その基本構造との探求と自然科学や社会科学における諸現象の数学的o確率的モデルの解析と理論化を行い、数学世界の新しい局面を押し開くことに挑戦しています。この他、マメ科植物と根粒菌の共生の研究、太陽光の有効利用、超伝導と磁性の研究、社会性昆虫の生態と分類の研究などなど、この要覧にワクワクする研究が一杯紹介されています。さらに、現在の研究から発展して今後挑まなければならない分野はまだまだ無限にあるのです。
大学院は工学研究科と統合した理工学研究科、前期課程と後期課程からなっています。知的好奇心に富み、未知の分野に意欲的に挑戦しようとする若い諸君が、自然に恵まれ伝統ある薩摩の国に位置する鹿児島大学理学部、理工学研究科で学んでくれることを期待しています。
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